アーリーリタイアはじめのいっぽ

個人で様々な投資を実践する「かぶとちょう」と現役債券トレーダーの「ぼんでぃ」がお送りする資産運用(資産形成)ブログです。

かんぽ生命の不正問題、金融マンの目線で金融機関の闇を語ります

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対面販売は担当者の質に依存する勝率の低すぎる運ゲー?今は主体的に情報を入手して自分で投資を実行する時代です

こんにちは、ぼんでぃです。

かんぽ生命の不正問題が話題になっていますね。

僕も少し前まで金融機関のセールスサイド(渉外部隊)にいたんですが、こういった事件を見てもあまり違和感を感じない程度に麻痺してしまいました。

実際多かれ少なかれ、顧客に不利益な契約を行った経験のある担当者がほとんどだと思います。

メガバンク地方銀行で営業している友人とも頻繁に情報共有をしているので、そう言った経験から感じた事を今日は書いていきたいと思います。

かんぽ生命の話題から、金融機関と顧客の関係という少し広いテーマでお伝えしていきます。

※少し批判めいたことも書いていきますが、今日はご容赦ください。

かんぽ生命の不正問題って一体何があったの

まずは今回の不正問題について軽く触れておきたいと思います。

事実とポイントだけざっとまとめます。

  • 日本郵便の局員が高齢者に対して強引な勧誘を行い不利益を生じさせた
  • 不利益を被った可能性のある契約件数が述べ9万件以上
  • 顧客利益を重視すると局員の評価に負の影響を与える評価基準だった
  • 現場の実態にそぐわないノルマ水準
  • 保険契約によるインセンティブを前提にした給与水準

こんな感じですかね。

要は、ノルマに苦しむ郵便局員が目標達成やインセンティブ確保のために、顧客の利益度外視して強引に販売を続けた結果がこの度表に出てきてしまったというところでしょう。

今回のかんぽ生命の不正問題の詳細に関しては、多くの人が取り上げているので事実だけを知りたい方はググってみてください。

今の状況を生み出したのは現在の金融環境にある

本題に入る前に、現在金融機関が置かれている状況を少しだけおさらいしておきましょう。

それだけで記事にしたほうがいいくらい根深い問題なんですが、今日はさらっと書きます。

※こんな状況で金融機関が頑張っているからしょうがないと言ってるわけではありません。この章を読んでもらうことでより、僕がお伝えしたい事が伝えやすくなると思って書いています。

マイナス金利は金融機関にとって大打撃

マイナス金利って皆さんは聞いたことがあるでしょうか。

現在日本はマイナス金利の状況に陥っており、マイナス金利の状況が金融機関の経営を圧迫しています。

概要をさらっと説明しておくと、

金融機関は日銀に口座を持っているんですが、マイナス金利の状況に陥る以前は顧客から集めた資金を日銀に預けたり、国債を購入するだけで相当な利益を得ることができました。

また、法人や個人に融資を行えば、それ以上に高い金利を得ることができ、お金がお金をうむ状態だったんですね。

一方で、マイナス金利の状況下では、お金を集めても日銀に預けたり国債を購入してもほとんど儲けは出ません。

貸し出しを行おうと思っても資金需要には限界があるので、必要以上には貸せず、貸したい貸し手はたくさんいるので、競争原理が働いて金利もどんどん下落してしまう状況となっています。

 つまり、伝統的な運営方法で利益が出なくなった金融機関は状況が一変して別のビジネスに手を出さざるを得なくなった。ということですね。

そのような流れで金融機関は金融商品の窓口販売に積極的に力を入れていくようになります。

マイナス金利政策(マイナスきんりせいさく、英: Negative interest rate policy)とは、中央銀行(もしくは民間銀行)が名目金利をゼロ以下に設定する政策であり[1]、経済を刺激するために行われる非伝統的金融政策である。似たような低金利政策にゼロ金利政策があるが、政策金利をゼロ近くに下げるゼロ金利政策に対して、マイナス金利政策は日本銀行当座預金の超過準備の名目金利をゼロ未満にするという点で異なっている。

マイナス金利政策 - Wikipedia

金融機関の目的と消費者の目的は完全に正反対に向いている

金融機関も株式会社であり、利益を追求する集団です。(一部の生命保険会社は相互会社形態をとっているところもありますが)

その金融機関は商品を開発するサイドと、販売するサイドに大きく分けられます。

それぞれの会社で利益の源泉となるものには微妙な違いがあるんですが、消費者が金融商品を購入することで主に二つの手数料を払い、金融機関は大きく分けて二つの利益が得られます。

一方で、消費者がわざわざ窓口で購入する目的は少しでもお金を増やしたい、安心をお金で買いたい、だと思います。

自分には知識がない中で、金融機関の職員ならきっと詳しくて良いものを紹介してくれているだろうというバイアスがかかった状態の中で話は進んでいると思います。

これは大きな間違いで、今回の件でもわかるように、金融機関や金融機関の職員の目的が消費者の目的とは全く別のところにあることは絶対に頭の中に入れておくべきだと思います。

そして、消費者が負担しているこの二つの費用が、金融機関と消費者の目的にねじれを生じさせてしまう原因となっているんです。

投資信託を例に考えてみます

窓口販売されている投資信託の購入手数料は1~3%程度かかるものが中心です。

金融機関によって様々ですが、販売担当者は販売利益額の総額でノルマを課せられてることがあります。(少なくとも一時期はどこもかしこもそうだったと思います)

例えば、僕でいうと年間で1億2000万円程度の販売利益目標がありました。

この1億2000万円という目標を、販売手数料2%の投資信託を販売して達成しようと思うと、60億円程度販売する必要があります。

今思い返すと途轍もない金額ですね笑

販売利益目標をいち早く達成しようと思うと、回転売買(購入と売却を繰り返すこと)を発生させることが一番の近道であり、商品を長期保有してもらうことに旨味はありません。

一方で、投資信託は短期売買を目的に作られている商品ではないですし、消費者としても効率よく運用を行いたい目的で購入するはずです。

ここで担当者と顧客の向かう方向に差異が出てしまうんですね。

もっとひどい時はこんな例も

顧客が高金利通貨で運用したいというニーズがあったと仮定します。

色々なソリューションを提案する事ができますが、2〜3年前は豪ドル建ての一時払終身保険(主に豪州債に投資)が大量に販売されました。

その一番の理由は、手数料が非常に高額だったからです。

商品性の類似した投資信託(豪州債権を用いた物)であれば購入手数料が2%程度(それでも高いですが)で済み、解約は顧客の好きなタイミングでいつでもできる一方で、豪ドル建ての一時払終身保険は購入手数料が7%前後かかり、早期解約の場合はペナルティがついたりしました。

また、投資信託にも維持管理手数料に当たる信託報酬というものが存在しますが、一時払終身保険はその信託報酬を上回る手数料率の保険関係費が付加されます。

本来こういった情報をつまびらかに説明し、顧客の意思を持って選択してもらう事があるべき姿ですが、情報の非対称性が存在する事をいいことに、豪ドル建ての一時払終身保険へ誘導し、多くの契約が発生していた事を覚えています。

本当に終身保険に対するニーズが顧客にあれば、豪ドル建ての一時払終身保険の販売は適切であったかもしれませんが、運用ニーズしか無い顧客に対しても販売しており、高手数料商品へ誘導する事が美徳とされていました。

このような状況が完全になくなることは無い

こういった顧客にとって不利益が生じる金融商品の販売スタイルを牽制するために金融庁が顧客本位の業務運営に関する原則というものを定めました。

世間でフィデューシャリーデューティーと呼ばれているものです。

要は、

金融商品販売業者は投資者の利益を毀損するような営業活動を行ってはいけません」

といった原則を定めたものになります。

金融庁検査が銀行に入った時も、不適切販売の事例が無いか徹底的に調べられ、銀行の監査部監査でもそういった事例が無いかどうかのチェックが入るようになりました。

しかし、銀行として利益をあげなければならない状況は依然として変わっていません。

金融環境に関しても、やもすればさらなるマイナス金利の深掘りになりかねない状況が続いています。

そんな中で、銀行が配当を維持し、株価を維持していくためには最前線の営業部隊が今まで以上に手数料収入を稼がなければならない状況は変わっていないということです。

中には正当な情報提供を行い、有意義なリレーションを構築して営業活動を行っている担当者もいると思います。

しかし、この状況下で高い営業ノルマに疲弊し、止むを得ず担当者の都合で商品を誘導してしまう担当者は多く存在し、そういった事案を確実に回避する事は現状ほぼ不可能だと思います。

銀行の人事部にも多く知り合いがいますが、ここ数年で高いノルマや上司の叱責も過激になり、若手銀行員を中心に精神を病んでしまう人が増えているそうです。

そういった前提を勘案すると、今まで以上に投資は自己責任という言葉に重みが出てきますし、利害関係がある相手の情報を鵜呑みにはしてはいけない状況になっているという事です。

欧米ではフィデューシャリーデューティー的な概念が日本よりも進んでおり、僕がいた会社も退職する際は顧客の運用に対する成果報酬で手数料を徴収するスタイルに切り替えており、限りなく顧客本位の営業スタイルに近付いていました。

ですが、伝統的な日経金融機関では依然として販売額や販売手数料ベースでのノルマを設定しているところが非常に多いようなので、その点には留意して欲しいと思います。

情報へのアクセスな容易な時代である事を利用し、自身で知識を身につけて自己防衛してください

現在は本や雑誌などの紙媒体だけでなく、僕たちのブログもそうですが、インターネットでの情報収拾も非常に容易になりました。

投資をなるべく確実なものにするためにも、様々なツールを使って高いリテラシーを醸成してください。

投資に確実な物はありませんし、得られるリターンが多ければそれなりのリスクを摑まされてる可能性が極めて高いんです。

そのリスクとリターンの判断もつかないまま、金融機関の担当者やうまい話に乗せられて投資を行ってしまうのは責任放棄と同じなので絶対にやめてください。

人道的に、金融機関の担当者が顧客利益を無視して販売活動を行うことが間違っていることは僕もわかっています。

ですが、現状その問題点にアプローチする事はできません。

僕やかぶとちょうにできることはこのブログを通して、客観性の高い情報を伝え、リテラシーを身につけてもらえるよう手助けすることだと思っています。

終始暑苦しい文章になってしまって申し訳ないんですが、今日はこれくらいにしておきます。

僕の意見が全てでは無いので、こういった事実もあるんだなと、参考にしていただければ幸いです。

今週も1週間頑張りましょう!